大学入試の新テストを分析してみる

kuro

現在の新高2生が受験する来年度から、大学入試センター試験がなくなり、新テストが導入されますね。

また、それに対応して河合塾をはじめ大手予備校も「新テスト対応模試」をスタートさせるようです。

一体、どういう問題が出題されるのか?正直、こちらも気になっております・・笑。
ただ、少なくとも、予備校の方も、手探りな状況であることは確かです。
予備校の問題作成者は何を基準に問題を作るのか。それは1つしかありません。大学入試センターが行ってきた「試行調査」です。

https://www.dnc.ac.jp/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/pre-test_h30_1111.html

今回は、この試行調査での出題傾向を分析してみることで、新テスト対策を考えるヒントを考えていきたいと思います。(国・数・英のみ)

国語:長文ではなくなり、記述対策が重要

試行問題はこちら(平成30年度)
https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00035513.pdf&n=02-01_%E5%95%8F%E9%A1%8C%E5%86%8A%E5%AD%90_%E5%9B%BD%E8%AA%9E.pdf

国語は、試験時間が80分から100分に延長されます。

重要なのは、第1問が「記述問題」になっていることです。
20~30字程度、40~50字程度、80~120字程度の記述問題も出題されています。しかも、80~120字程度の記述問題は評価の重みが1.5倍になるようです。

これは、これまで国公立大学受験者に限られていた記述対策を、センターを受ける人もやらなければいけなくなるということです。

ただ、内容は従来の大学入試の記述とはちょっと違うかもしれません。

29年度の試行問題は、生徒会活動が題材となっていました。生徒会の議題について、どのような議論がされているのかを記述でまとめさせる問題です。これまでの国語とはぜんぜん違う「変わり種」でした。
https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00011239.pdf&n=5-01_%E5%95%8F%E9%A1%8C%E5%86%8A%E5%AD%90_%E5%9B%BD%E8%AA%9E.pdf

しかし、上述の最新の30年度の試行問題では、もうちょっと「従来の国語の記述問題」に近い内容になっていますね。こちらは対策しやすいかもしれません(大変なことは大変ですが)。最終的にどうなるかわかりませんが、30年度の問題の傾向を本命と考えておいたほうが良いかもしれません。

第2・3問は、これまでの現代文(第1・2問)に近い内容となっています。
ただ、文章が短くなっています。かわりに、複数の文章を比較するような問題になっています。さらに、資料も出てきています。

内容も、詩の鑑賞だったり、著作権についての考察など、多様なジャンルになっています。長文読解のように一つの文章を深く読み込むのではなく、複数の文章に通底するテーマを読み解くような内容です。こういう形の問題では、自分で資料にあたって調べ物をすることで培われる能力が問われていますね。

第4・5問は、古文漢文です。
こちらはあまり変更はないようです。ただ、それぞれの大問に1問だけ、生徒と先生の会話をもとに考えさせる問題が出題されています。これは今までの現代文でもちらほらみられたタイプの問題ですが、これがあるからといって難しくなったかというとそうでもないと思います。古文漢文は従来どおりの対策で良いのではないかと思います。

数学:文章量が増加、ⅠAは短い記述式あり

試行問題はこちら(平成30年度)
ⅠA
https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00035624.pdf&n=02-02_%E5%95%8F%E9%A1%8C%E5%86%8A%E5%AD%90_%E6%95%B0%E5%AD%A6%E2%91%A0.pdf
ⅡB
https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00035515.pdf&n=02-03_%E5%95%8F%E9%A1%8C%E5%86%8A%E5%AD%90_%E6%95%B0%E5%AD%A6%E2%91%A1.pdf

試験問題は、ⅠAは記述が加わるぶん60分から70分に増加、ⅡBは60分と変わりません。

ⅠAにだけ、ちょっと記述問題があります。答えを記述で書かせる問題や、導き出せる条件を文で書かせる問題が出題されました。
内容はそこまで難しくはなっていないと思います。

全体的に問われている内容は、「いつもの数学の教科書の範囲」で変わりないのですが、これまた多様な具体例がモチーフになっています。たとえばⅠAでは、コンピュータのグラフ表示ソフトが出てきたり、建築基準法に基づいた階段の設計について、出題されています。

コンピュータのグラフ表示ソフトの問題って、これ、まさにこのサイトのことですね。
https://cafetalk.com/column/read/?id=108018&lang=ja
こういうサイトのような新しいテクノロジーに親しんでいる人たちに、大学入試がようやく追いついてきたか、という感じです。

ⅠAでは生徒の会話文が出てきます。生徒の考えた筋道に従って空欄を埋める問題があります。これは、日頃から、ただ先生が生徒に解法を教えるのではなく、生徒同士でやり方を考えたり、話し合ったりしているか、という「能動性」を評価したい、という思いがあるのかもしれませんね。

ただ、具体的な会話や、事例をもとに問題が作られているため、全体的に文章を読む量が増えています。ですので、速読力や情報をすばやく分析する力が求められていると思います。ここは、これまで問われてきた「純粋な数学の力」に新たに加わる要素ですね。

英語:筆記は文章量が多く、リスニングの比重は2倍に?

試行問題はこちら(平成30年度)
筆記(リーディング)
https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00035536.pdf&n=02-08_%E5%95%8F%E9%A1%8C%E5%86%8A%E5%AD%90_%E8%8B%B1%E8%AA%9E%28%E7%AD%86%E8%A8%98%5B%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%5D%29.pdf
リスニング
https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00035537.pdf&n=02-09_%E5%95%8F%E9%A1%8C%E5%86%8A%E5%AD%90_%E8%8B%B1%E8%AA%9E%28%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%29.pdf

試験時間は「筆記(リーディング)」80分、「リスニング」60分(うち解答時間30分)と変わりません。

ただし、配点が「筆記(リーディング)」200点から100点、「リスニング」50点から100点に変更されています。この変更には、「読む」「聞く」を平等に評価したい、という思いが見えてきます。

しかし、その配分を決定するのは大学です。なので、本当に筆記(リーディング)の点数配分が半分になるのかどうかはわかりません。(小見出しの「比重が2倍に?」に「?」がついているのは、そういうわけです)

試験の内容については、発音とアクセントの問題は姿を消しました。純粋に読む力を評価しているからでしょう。また、料理のレシピやブログの内容など、実生活に密着した内容が増えています。

問題は文章量が多いこと。的確に文意を把握しながらつっかかることなく読んでいく必要があります。また、登場人物の考えを要約することも求められたりします。これはこれまでのセンター試験でも出題されたことがありますが、だいたいの生徒がこういう「要約」の問題を苦手としています。選択肢も、「当てはまる選択肢をすべて選ばせる問題」もあったりして、なかなか複雑な出題になっています。

さらに、新テストとは別に、「話す」「書く」を評価する試験の代替として、民間の資格・検定試験を活用することも重要です。高3の間に英検やTOEFL、GTECなどの英語検定試験の対策をしておく必要があります。

民間の試験を受けることも考えると、新テストを受ける高校生は、英語の勉強に割かなければいけない時間の比重が増してくるのではないかと思います。大変ですね。

最後に

こうした新テストの対策として、一番いいのは、新テストの試行問題を実際にやってみることです。が、これから高1生・高2生になる生徒さんは、試行問題は高3生用なのでそのままやるのは少しむずかしいでしょう。ですので、大手予備校の新テスト対応の模試を受けておくことは重要です。

僕の方でも、生徒様のご家庭から「新テストの模試があるらしいけど、どういう勉強をすればよいか」というご質問をちらほらといただいています。もし同じような悩みを抱えているご家庭がありましたら、一緒に考えていきましょう!

This column was published by the author in their personal capacity.
The opinions expressed in this column are the author's own and do not reflect the view of Cafetalk.

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