先日、仕事に行くべぃと自転車をかっ飛ばしておりまして、橋の上を通ったんですよ。で、ふと下を見たら、水面の上をカラスが直立不動のまま流れていきます。すわ、(カラス的)キリストの再来か?!と単純な私は仰天したのですが、飛び立っていったのを見たら何のことはない、流木に止まっていただけでした……。
てなわけで私はいとも簡単にトリックに引っかかる、純真(?)な人間です。おかげさまでサスペンスもミステリーも、だいぶ核心に迫るまで犯人がわからない。これはお得ですよ。謎解きに素直に「へぇぇぇ」と言えるし、ハラハラドキドキも沢山味わえるってなもんです。母もよく言っております。「今回の○○(某アメリカ製ドラマ)、すぐ犯人がわかって面白くなかった!もー、(誰それがあれこれした時点でどーのこーの)」……おかーさん、それ、私まだ見てないからね。
さて、そんな私が今回ご紹介するのは、"Just Like a Movie"
ケンブリッジ、レベル1、本文28P、サスペンス。英文レベルは中2程度。見開きの片側が全面イラストという感じですので、英文の量は実質的にページ数の半分程度です。
貧しい男が、愛する女と結婚するために、金を得ようと野心を起こします。大好きな映画の数々を真似て、彼はある計画を立てるのですが……。
この長さで、しかも英文は難しくないっていうのに、思わず「おお!」とつぶやくサスペンスです。途中から、完全に裏をかかれました。でも、後で考えたらちゃんと伏線が張られていて、気づかなかった私がアホなんですかね?金持ち女性の遺産狙いで結婚する辺りまでは「ふんふんふ~ん」と読んでいくのですが、その後の出来が素晴らしい!!! 主人公が追い詰められていく心理もきちんと描かれていて、「なんですとぉぉぉ」という転換があり、しかも真相に無理がない。オチもしっかり決まっています。
この主人公、計算高くてナルシスト、「おまえ、いい加減にせぇや」と言いたくなる男です。彼が結婚しようと思っている女性は、彼をとても愛していて、賢い。「お金なんていいのよ」という彼女の言葉はちゃんと聞こうね。まぁこういう男は結婚には向いておらんのではないでしょうか。お金目当てに結婚されてしまう女性もいい人です。映画化するならキャメロン・ディアス希望。
私の希望はいいとして、こんなにしっかりしたサスペンスがお手軽に読めるなんて、どーいう太っ腹……と思ってしまう話なんですが、逆を言えば、制約を逆手にとった作り手の腕がいいんでしょうね。普通の原書以上にテンポが速くならざるを得ない中、それを見事に活かしてどんでん返しにつなげています。
ともあれ、こんなふうに自分で自分のことを「俺はハンサムだからさ。ほら」という奴が、ロクな奴であるわけがない。それでもそういう悪い男の顛末は気になります。悪い男が主役のサスペンスって、だからこそ面白いのかもしれません。
などと思っている私はというと、川の水面から飛び立っていったカラスを見ながら、「あいつ、私に金返さないまま、日本を飛び立って音信不通だよ…」と昔の彼氏をしみじみと懐かしむのでありました。とほほ。
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