英国の思い出 ー 虫の知らせ(2)

Urashima Taro


(前回のつづき)

前回、英国の虫のサイズについてお話しましたが、私はその時にはじめて、夕方に自転車に乗るとき悩まされていた虫の集団の正体がわかりました。


虫のサイズと動き

 

実際、これほど小さい虫は見たことがありませんでした。

小バエよりさらに小さく、蚊の集団のようでもありますが、飛んでいるというより、霞みのように空中に浮遊している感じです。

一匹ずつはとても識別できず、羽音も聞こえません。

自転車に乗っているときは(とくに夕方は)、眼鏡をかけて口をしっかり閉じていないと、目にも口にも入ってきます。

鼻の穴に入りかけた場合は、すかさず「フン」と鼻息で飛ばしながら、自転車を漕ぎます。

鳥なら、口を開けて飛んでいるだけで、食料が勝手に口の中に入って来るでしょう。 

  

昆虫は温暖地域ほどサイズが大きくなり、種類も豊富になります。ゴキブリなど、英国人が見れば驚きは大きいでしょう。

アメリカでは普通に見られるそうで、ちゃんと英語名もあり、知られているとは思いますが・・・私は英国滞在中に見たことがありませんでした。

 

英国人ではありませんが、私の帰国後に、ヨーロッパ大陸の友人が私の研究室にゲストとして滞在していた時期がありました。

昼食時に2人で街に出たときのことですが・・・アブラゼミがビビッ、ビッと、短い鳴き声を断続的に発しながら、低空飛行で彼の方に向かって飛んできました。


この時の彼の慌てぶりは、相当なものでした。超大型のスズメバチの類が襲ってきたと思ったようです。

 

ちなみに、英和辞典には bee = ハチ とありますが、bee は蜜蜂のみを指し、それ以外はまとめてwaspと呼ばれます。

waspと呼ばれる一群には、「ぶよ」のような比較的無害のものから、スズメバチのような危険度の高いものまで、幅があります。大声で鳴き、さらに高速で飛行するセミをwaspと思えば、慌てるのは当然ですね。


ヨーロッパ大陸の虫

気温はサイズだけでなく、虫の動きの速さにも関係します。

ブリテン島の気温は、夏場でもコートが必要な日があるほどで、虫と言えば、のろのろと動くイメージがあります。最も動きの速いのはハエでしたが、これも日本のハエに比べるとかなり「のろま」でした。


一方、ヨーロッパ大陸になると、夏の気温はかなり高く、大陸の虫は英国ほど小さくありません。それでも、動きは日本の虫より少し遅めで、セミのような超特急の飛行能力を有する種はいなかったように思います。


夏に車で郊外道路を走行すると、フロントガラスに虫が次々に激突し、瞬時に潰れます。

頻繁にワイパーを作動させて掃除しないと、前方が見えなくなりますので、クリーナーの液がすぐ空になってしまいます。

日本でも地方都市では、晩夏から初秋の短い期間、同じようなことがありますが、アルプス地方でフロントガラスに激突する虫は、むしろ日本より大きく、数もずっと多くなります。

殺生を戒められている私が、大量殺戮を犯してしまう訳ですが、これはどうにもなりませんでした。

 

 

 

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