多言語レッスンの始まりは駅前留学。特徴はダイレクトメソッド。会話から文法まで全て日本語を使わずに学びます。社会人にとってありがたいのは、予習をしなくてよいばかりか、間違っても叱られず、何かしら必ず褒めてくださいます。人間的にも魅力的な先生が多く、あの先生に自分のことをなんとか知ってもらいたいというモヤモヤした気持ちにさせてくれるのがモチベーションの一つです。
私は私立の教員なので、修学旅行の引率で3年に2度のペースで海外に行き、不十分な語学力のために必ず消化不良になって帰国します。
あるとき意を決してひと夏のつもりで英会話レッスンを始めました。マンツーマンでは丁寧に自分の英語を修正してもらいつつ、グループではそれぞれの生徒さんから飛び出す微妙に異なる単語や表現を吸収していきました。そしてほぼ同時期にフランス語をスタートさせました。それは世界史の教員としての興味からです。
まず船が難破して海岸に流れ着き、見知らぬ人が、訳のわからない言葉で話しかけてくる状況です。先生は笑顔でジェスチャーと挿絵を利用しながら丁寧にフランス語のメモをくださいましたが、一週間に一度の40分のレッスンが長く感じて、終わると頭がズキンズキンとしました。
「アトション ポノセション エクテ レペテ」「セタン クレヨン」と言われ、私は「セタン クレヨン」と発音し、「クレヨンって鉛筆のことなのか」「エクテは聞く。レペテは繰り返すのことなのか』と覚えます。
街を歩いている時、「アトション ポノセション」「???」「アテンション プロナウンシエーションだ!」「レペテはリピートだ!」「クレヨン?粘土を焼いたのが鉛筆なんだ」って具合に脳の中で化学反応がおきました。
英語と仏語の多くは、スペルが同じで発音が違うだけということに気がついて以来、ぐんぐんとボキャブラリーが増えていきました。発音を変えればそのまま使えるのです。ちなみに英語で語尾にtion,e,mentがつくのは、大抵もとは仏語です。
仏語の文法では「赤いリンゴ」ではなく「リンゴ赤い」の語順になり、「セタン クレヨン」だけど「セトゥンヌ ゴンム」すなわち、男性名詞と女性名詞があって「un」「une」の冠詞などが必須になります。
さてここからが最大の難関です。人称と時制によってどんどん動詞のかたちが変化して、「ed」をつけるだけの英語と違って苦労の連続です。これは、繰り返し繰り返し失敗と成功を続けながら身につけるしかありませんが、通じた時の喜びは新しい化学変化を生み出すのです。
あとでわかったことですが、英語の文法は人為的にシンプルにつくにかえられたもので、英語こそが特殊なのでした。
(その3に続く)
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