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異動先の貿易部では、当初ウダウダと仕事をしていた。
部長直轄でカナダから輸入する食品の貿易事務を任されたものの、覚えてしまえば単純な伝票処理の仕事。
それを繰り返す毎日は、単調だった。
何より辛いのは、部長や部の同僚も
“こいつ、お荷物だな…”という態度が見て取れて、会話という会話も無かった事。
転職したい気持ちはあれど、この頃の日本はバブルの終焉をむかえつつあり、転職も簡単ではなかった。
辞める事も出来ない、だからと言って
ここで何が出来るのか!? ポンコツなりに悩みに悩んだ。
そして、出た結論は
目の前の事を、とにかく一所懸命にやる事。
すこしでも、この場所で役に立てる自分になりたい。
初めて心の底から、そう思った。
その日から、心がけた事は
気持ちよく朝の挨拶をする事。
頼まれた仕事を、しっかりとこなす事。
こんな当たり前の事を繰り返していった。
同時に、手付かずでいた大学の勉強もやり始め、お昼休みにはレポートを書くのが日課となった。
そんな姿をずっと見ていた部長が、ある日
「Toria君、そんなに勉強してるんだったら、もうすこし遣り甲斐のある仕事を任せるよ」と言ってくれた。
その日以来、少しずつ営業事務から一段、二段とステップアップして
いろいろな仕事を部長は任せてくれた。
ついには、事務員なのに買付から営業までを担当するようになっていた。
自分の「心の在り方ひとつ」で、どん底に思えた環境が変わっていく。
この体験が、ひとつ自信になった。
そこで、Toriaには密かな野望が芽生えていた。
生まれてこのかた、大きな夢など持った事がなかったのが
初めて夢を手帳に書きだした。
それは、何とも都合の良い、とうてい叶いそうにない事。
▶ 会社のお金でパスポートを作ってもらい、仕事でアメリカとカナダに出張する事
バカである・・・ただただ、バカである。
26歳まで一度も、海外に行った事がない。
会社のお金でまず海外に行きたい!
そんなバカな事を考えた。
古い体質が残る会社で、しかも営業事務員が海外出張などあり得ない話。
やっぱり、ポンコツOLが考える事は
どこまでもポンコツチックだった…つづく。
スピッツ「空も飛べるはず」
空飛べればいいんですけどね…ポンコツから少し脱皮したようだけど。
TORIA (o ̄∇ ̄)/ ▶第4話を読む