脱力とはなにか

中村勇太

脱力!力を抜いて!

 

よく言われます。

 

でも、言われた方は大抵わかりません。

力を使わずに弾くの?

あ、確かに自分の体が力んでるかも。

という程度の受け止めになりがちです。

 

僕の考えが至る範囲では、脱力にはいくつか要素があると思っています。

 

まず、構えの段階で「筋肉の張り」を使うこと。

次に、動作の段階で余分な力を使わないこと。

さらに、弾くパッセージに合わせて、動作と勢いを括ってまとめられていること。

 

構えのことは他の記事でも書いてきているのですが、メインの要素を挙げると以下です。

 

楽器を首で挟まないこと。顎に引っかかるだけ。

肩を上げないこと。

左手ではなく、左腕主導で楽器を上げること。

右手の指同士がほぼ離れないこと。(弓が宙に浮いている状態で水平を維持しない)

 

動作中に生まれがちな、余計な力は以下です。

 

シフティングを邪魔する「左手の弦を押さえる力」

弦の振動、弓のリアクションを止める「右手の力(おもに人差し指)」

楽器の揺れを固定しようとする「顎と肩の力」

 

そして、パッセージに合わせた動作の括りで見るポイントは、主に以下です。

 

拍子

連桁の括り

スラー

和音

分散和音

フレーズ

他のパートで同時に進行する部分

 

音程とリズムが合っていればそれらしく聴こえるものですが、ビートがないので聴いていて歯応えがなく、弾いている側も頭と身体が整理されません。

全ての動作一つ一つに意識や勢いをつけていくと、全部の音の強さが等しくなる方向に向かいます。ここで、「どの音が大事か」を自己責任、自分の考えで読みとって、その動作の勢いの中に付随する動作をまとめてしまいます。

バイオリンは準備動作ありきの楽器なので、(休符がない限り)一つの音を出し終わった瞬間に次の発音の準備が完了していなければいけません。

この準備の動作さえ、それぞれの手の勢い(最初に払い出す、働かせるエネルギー)が減衰する中で行います。

もちろん、動かない部分についてはビートを消す、小節線がない世界を目指すこともあります。

 

ここまでの三つの大枠は、それぞれ問題が個別に発生していることもあれば、別の要素に起因していることもあります。

 

こういったことを、知らないところから自力で導き出すのは大変なのでレッスンがあるわけです。

もちろん回り道にも意味はありますし、否定もできませんが、回り道した時に「大事なことに気づけるフック」があるかどうか、はレッスンで教わった内容による、と個人的な体験上思います。

 

This column was published by the author in their personal capacity.
The opinions expressed in this column are the author's own and do not reflect the view of Cafetalk.

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